官僚の働き方改革に対して元官僚が物申す!

ここ最近、長時間労働サービス残業が原因で国家公務員(特に官僚)の離職率の増加や学生人気の低下が取り沙汰されて、省庁の働き方改革がメディアやSNSなどで話題となっているが、炎上覚悟で物申したい。
ポジショントークは一切なしで元官僚かつ一国民の立場から率直に言わせてもらうと”官僚が享受するキャリアパスを考慮すると、その対価として過重労働を強いられることは当然だし、耐えられないのであれば退職すればいいのでは?"というのが私の意見。
この意見に対して「いきなり何を言っているんだ。ワークライフバランスが求められるこの時代において時代錯誤も甚だしい。」と感じる人が大半だと思うが、それでも官僚という身分の人間に対して私はそうは思わない。

 

私の主張の大前提

長時間労働の根本的な原因は何かと言うと、単純に業務量の多さである。中央省庁という立場上、政府から次から次へと息つく暇もなく仕事が降りてくるし、また、様々な団体からの意見・要望・陳情などにも対応しなければならない。さらには、ことあるごとに新しい会議体や検討会が次々と発足するし、それに伴って毎回、幹部への説明資料や想定問答などを作成しなければならない。しかも、その資料を作成するにしても他部署に確認依頼を撒いて部署間調整をする必要があり、資料中のちょっとした文言一つについて部署間の争いが生じることも頻繁にあり、これが業務の流れをを滞らせる。文字だけだと伝えづらく、実際にそこで働いてみないとイメージしにくいと思うが、とりあえず業務量が半端ないのである。しかもこれらの業務のほとんどが国民の権利義務に大きな影響を及ぼすため機密性が高く、容易に外部委託できないものばかりなのだ。要するに、長時間労働になってでも官僚がやらなければならない当然の業務なのだ。
それゆえ、国会待機を改善したりツールを導入してペーパレス化を実行するなどといった取組は支持するが、それらをしたところで長時間労働が解消されることはまず想像できない。また、サービス残業についてであるが、そもそも公務員の給料は企業や国民が納めた税金が原資となっており、そのパイは企業の業績や課税対象人口に左右されるため限りがあるのは当然だ。

 

そもそも官僚は恵まれ過ぎた環境にいる

官僚の何が恵まれ過ぎかというと、その特権的なキャリアパスだ。
例えば、①長期在外研究員制度という名の海外大学院留学②幹部ポストでの都道府県・市区町村への出向(その自治体のプロパー職員を差し置いて副知事や副市長、部長・課長等の幹部ポストが与えられる)、③競争なき出世(最低でも本省課長級までは昇進が保証されているという意味で)などが挙げられる。
特に若い間は、お金や時間に替えられないほどの肩書や経歴を得て次々と自らのキャリアに箔をつけていくし、自己承認欲求も満たされまくり。実際に各省庁のパンフレットに出ている現役官僚やネット上に出ている元官僚の経歴などを見ればわかるけど、ザ・エリート的な肩書や経歴を持った人が非常に多い。
その上、国レベルで社会に大きなインパクトを与える意思決定に参画できるし、年収もそこそこ高い。
大学時代に国家総合職試験に合格して官庁訪問を通過する、ただそれだけで20歳そこらの大学卒業したての人間にこれまでのバラ色のキャリアパスの機会が保証される。
しかもこれらのキャリアパスは全て私たち国民が納めた税金が土台となっている。
要するに、官僚は試験に受かって採用されるだけで、国民が納めた税金を原資として普通の人が到底経験できないようなキャリアを謳歌できるのだ。
だからこそ、これほどのキャリアパスを享受できる上に、長時間労働サービス残業に対して不平不満を言うことについて、かなりの違和感を覚える。
逆に、官僚にホワイトな職場環境を提供することは官僚の特権化をさらに助長し、官僚に対する不公平感が世の中に生まれるのではないかとさえ思っている。(現に私はそのように感じる。)
言い換えると、誰もが得られない何かを得るためにはそれなりの犠牲を払うことは当然だし、それによって世の中の公平感が担保されるのではないかと思っている。
そもそも中央省庁ではその立場上業務量が圧倒的に多いゆえに労働時間が長くなるのは当然のことだし、予算が限られているために残業代がフルで出ないのも当然のこと。こんな情報ネットで検索すればいくらでも出てくるし、それを覚悟で入省しているのだから入省後に不平不満を言ってもなー...と思う。

 

官僚は自分がどれほど恵まれているのかを自覚すべき

これは人間の本質だと思うのだが、人間は同じ環境にずっといるとその環境が自分にとっての当たり前となり、自分がどれほど恵まれているかを忘れてしまいがち。例えば、貧困国からすれば日本は物質的にかなり恵まれている国だけど、多くの日本人はそうは感じない。なぜなら、毎日ごはんを食べることは、私たちが生まれたときから当たり前の日常となっているから。
それと同じように、官僚も上述のキャリアパスを享受できることが自分たちにとっての当たり前となってしまっているからなのか、自分たちが既にどれほど恵まれているのか忘れていやしないかと思う。
だからこそ自分たちが一般人と比べて既にどれほど恵まれた環境にいるのかを今一度再認識してもらいたい。
実際に私自身、官庁に勤めていた頃は自分がどれほど恵まれているのか気にも留めたことはなかったし、残業代が出ないのなら、上司に命令されようが、どれほど公益に関わる業務であろうが残業なんか絶対にするもんかとさえ思っていた。しかし官庁を出て一般企業に就職して初めて自分が官僚時代にどれほど恵まれた環境にいたのかを自覚した。
官僚に与えられたキャリアパスはお金や時間に代えられないほどの価値があるし、だからこそ長時間労働サービス残業に対して不平不満を言うのは一国民からするとある種の高慢としか思えない。(もちろん官僚にはそのような自覚はない。)
もし、自分たちに与えられたキャリアパスはお金や時間に代えられないほどの価値は有さない、つまりお金や時間のほうが大事だと思うのであれば、ホワイトな職場環境の企業に転職すればいい。別に官僚であることが唯一のキャリアではないし、誰か辞めても代わりはいくらでもいる。むしろ長時間労働サービス残業も苦ではない有能な人材を民間から採用して埋め合わせればいい。そのような属性の人間は仕事をあたかも趣味の如く楽しめるがゆえに、能力を遺憾なく発揮しながらバリバリ働いてくれるのだから。ちなみに官僚の場合、何か特定の専門知識というよりも論理的思考力や文書作成能力、調整能力が求められるため、ある程度の地頭と社会人経験があれば誰でもすぐに適応できる。だからこそ誰か辞めてもその分中途採用で埋め合わせれば組織は常にまわり続けることができる。ある意味、労働集約型の仕事と表現しても過言ではない。
もし官僚という身分を捨てたくないのであれば歯を食いしばって長時間労働サービス残業に耐えながら働き続ける覚悟を持つべきだと思う。


まとめ

私の意見は、
①官僚がやらなければならない業務の量自体が多いため、長時間労働になるのは仕方がない
②官僚にはお金にも時間にも代えられないほどの価値を有する特権的なキャリアパスが与えられており既に恵まれた環境にいるのだから、長時間労働サービス残業になったからといって、それに不平不満を抱くのはおこがましいのでは
③そのような職場環境が嫌なら官僚を辞めてホワイトな企業に転職すればよい
ということだ。
私は決してこの意見が冷酷かつ時代錯誤だとは思わない。国民感情的な意味でむしろ筋が通っているとさえ思う。

 

以上、最後まで読んで頂きありがとうございました。